ADHDと診断された話

数年前、ADHDと診断を受けた。注意欠陥多動性障害。いわゆる「大人の発達障害」。出されたお薬は「アトモキセチン(ストラテラ)」40mg/日。ターコイズブルーの大きなカプセルで「身体に悪そー!でも綺麗から許す!」とか思ったな(笑)

昔からとにかく片付けが出来ない。全く出来ない。出しっぱなし、使いっぱなし。忘れ物が異常に多い。すぐに予定を忘れる。衝動的に行動する。じっとしてるのが苦手。かと思えば、過集中。寝食を忘れて集中、没頭、その間は全て生返事。簡単に怪我をする。生傷が絶えない。

幼少期からそんな子だったけど、学生時代は勉強がまぁまぁ好きで、国語と数学と英語が大好きで得意だったから、社会と理科が出来なくても、遅刻欠席が激しく、出席日数ギリギリでもなんとか「優等生」の成績だった。OL時代も人事部だったけど営業みたいな仕事で、上司も私の扱い方をなんとなく分かってくれてたから「とりあえず仕事は頑張るし、出来る」で乗り切った。

でも、独身の頃ならまだしも、結婚して主婦・母親になってからはこれが大問題になって、夫からは「なぜもっと注意して普通に出来ない?!」「おかしいやろ?!」と責められる日々…いわゆるモラハラ。

いやいや、私なりに精一杯努力してるんだけど…(TーT)

結果「普通の女の人が普通に出来ることが、私には出来ない…。私はダメな奴なんだ。迷惑かけてばっかりで、夫を怒らせてばっかりで、子どもの世話もロクに出来なくて、生きてる価値もない…」と、どんどん鬱っぽくなっていった。「煙のように消えてしまいたい…」と希死念慮も酷かった。いや、それでも幼い子どもを残して死ぬわけにはいかない…。

元来「健康オタク」ならぬ「病気マニア」なので色々自分で調べ、「これはADHDかも知れない」と思った。自分でお薬を個人輸入しようかとも思ったんだけど…もしかしたらお医者さんから「奥さんは病気です」って言ってもらったら、それだけで夫のイライラも減るんじゃね?!と。一縷の望みをかけて、夫と共に病院へ。治らなくてもいいから、夫のイライラさえ無くなってくれたら良かった、ってのが本音。

心療内科のお医者さんの第一声は「日常生活でどんなことに困ってますか?」だった。病気かどうかではなく、現実的に何に困ってるのかを聞いてくれて嬉しかった。

私からの自覚症状、夫からの客観的視点。検査もしてADHDだと認めてくれた。ただし「ADHDにしては…あまりにもとうとうと論理的に自分の症状を解説し、客観性も優れてて…」と変な評価をもらってしまった(苦笑)「コンサータは嫌です」「試すならストラテラの方が良いかな」とか自分で言ってたし。病気マニアだから…

とりあえずストラテラ40mgで様子見ましょう、となった。一般的には80mgだけど、40mgで何か変わるなら…と。初めの数週間は20mgから慣らそう、だったかな?10mgだったかな?忘れたなー

ストラテラを飲み始めて2日後くらいに、肌が超敏感になったのを覚えてる。空気の圧を感じるくらい、風もないのに空気が肌をなでる感じ。鳥肌が収まらない。神経がむき出しになったような感覚になった。1週間もすると収まったから良かったけど。神経に作用するお薬の底力を知った感じ(笑)

2ヵ月くらいかけて40mgまで増やしたのかな。

一番の変化は…思考が「超」遅くなったこと。

「先生、アホになった気分です」って言った(笑)それまで、水槽の中のあぶくがポコポコポコ~と上がっていくようなスピードでモノを考えていたのが、泥の中から泡がゆっくり浮き上がって、ポコッ、ポコッと表面に出てくるような感覚の違い。遅いし、重い。

「んー、それがいわゆる『普通の思考スピード』です。慣れてください」と言われて、めっちゃ驚いた。なんだこれ。これで一体何を考えられるというのか…

思考スピードの遅さ、重さに辟易しながらも、日常生活は落ち着きを取り戻し、診断されてからは責めることもなくなってきた夫も、少しは片付けられるようになった私、忘れ物が減った私、怪我が減った私に安心してきたようだった。責められることが無くなったから鬱っぽい症状も減り、夫婦喧嘩も減った。

2ヵ月に1回くらい通院して、先生とあれこれ話をするのは楽しかった。私よりむしろ夫のお悩み相談みたいにもなってて、先生が私の気持ちを代弁してくれる、みたいな(笑)

落ち着きは出てきたんだけど…1年半もしたら思考スピードが元に戻ってることに気が付いた。お薬に慣れちゃったのね(笑)増やす?いや、もう夫から責められないから良いんじゃないか?なんとか適当に生きていけてるし。それに…やっぱ思考スピードが遅くなるのは「つまんない」(笑)頭の中がわちゃわちゃ忙しい方が…大変だけど面白い。

半年くらいあれこれ考えた結果、「お薬飲んでる意味ないなら、止めよ」と思った。夫に言うと「?!」って驚いてたし、不安がってたけど…先生に「お薬は実際もう効いてないし、いっそ断薬して、これからは自分の特性を活かして生きていきたい。必要とあらば過集中だって利用したい」って言ったら大いに納得してくれて、笑顔でOKしてくれた。「素晴らしいと思います。また何か困ったことが起きて、お薬とか必要になったら、その時に考えましょう。」って。

相変わらずやっぱり片付けは超苦手だけど、予定を減らしたり色んなアプリを使ったりして忘れ物は減ってきたし、子ども達が大きくなってきたら学校のアレコレに対処する必要はなくなってきたし、頑張って注意することを覚え、怪我することもまぁまぁ減ったし。失敗しても「しゃーないな」で夫も済ましてくれる。今はなんとなく穏便に生きることが出来てる。時には過集中も利用する。衝動性も利用する。思考スピードの速さも利用する。

平和だー。

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